ナワトビ


台風の後だから夕方散歩に出た。空がすっきりやはりきれいだ。風も吹き涼しく私の足は軽やかに運ぶ。スキな曲を聴きながら。午後6時過ぎだから通勤帰りの人に出会う。五日市線の小さな駅から下りて来た人たちだろう。数人が階段を下りて下の町に帰る。初老の男性を私は追い抜いた。もう帰りはクタクタなんだろうな。当たり前だよおじさん。若い男女が二人自転車で私を追い抜いて行った。彼女は赤い帽子に赤いショートパンツ。イイなー赤いパンツを目で追った。赤いショートパンツ、赤いズボン、赤いコールテンのズボン。十代の頃、赤いコールテンのズボンを気に入ってはいていた。私のスキなロック歌手は歌の中でボクのお正月の赤いコールテンのズボンを縫っているダーリンと歌っていた。私はその頃、彼の歌が大スキでまた歌っているその人が他人のように思えなくどこかで会った事のあるなつかしい人の様な。赤いコールテンのズボンなんて歌う人はもしかしたら腹違いの兄弟ではないのかと真剣に思って人探しをした事もあった。私は現在102歳の母の介護に明け暮れている。いつか幾つにもなれる自由な気分になれたならもう一度赤いズボンを履こう。その時は身体がもう少しスリムになって足がスキップする様でなくてはならない。その日の為には、足は鍛えておこうと思っている。そのつもりで朝、ナワトビ1000回はしている。だけれどこの頃、1日置きか週5日になってしまった。つまりやらない日は朝早く起きれないからだ。その歌手に憧れた20年前は1日3000回跳んでいた。100回跳ぶのがやっとだったのに、3000回跳んでいるとある日駅の階段は三つくらいすっ飛ばして登った。私の足は鉄筋でできているという風に。ジーンズの中の足がスーッとしていた。
あれから病気もしたし母の面倒も看るようになったしだんだん数が少なくなって今は1000回をやっとキープだ。いつかはシャープな身体をめざして私は年老いてできなくなるまでやるのだろう、ナワトビを。
まだ続くナワトビ
20代は5000回跳んでいた、毎日。その訳は私は何をしても三日坊主でレース編みをしても完成できない。何か一つの事が続かない人だと思い、それを克服する為にナワトビを毎日やるときめた。1年間休まず跳んだ。跳べたからそれでナワトビは卒業したんだ、その頃。それが私の何かやろうとする時のバネになっている。それでフイルムを巻き戻して40年前の自分を振り返ると私はハングリー精神で生きなければ現実を変える事ができない土壌に昔も今も居てだからナワトビは続けなければならない、前進するために。



「夏のカーテン」
116センチ × 110センチ
水彩×布
2015

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